設計士の一言

宮崎県はやや南部に位置する宮崎市.

敷地は,宮崎市のほぼ中心市街地に位置する.

住居地域ではあるが,近隣には宮崎駅と商業ビル,少し移動すると大型ショッピングモールが位置し,多数の飲食店や店舗が建ち並び,生活にはなに不自由のない場所である.

そのような地域の住宅街に計画した,建物全てをその用途として利用する美容室である.

北側と西側を道路に面した敷地は,間口が約18m,奥行が約31mの,やや台形状の四角形をしている.

住宅が建ち並ぶ住宅街の一区画ではあるが,一本通りを超えると,その周辺には今後,再開発が予定されている巨大な空地が広がっている.

採光や換気については,周辺からでも十分に確保できるものと思われたため,敷地の状況をそのままストレートに活かした計画としている.

地域特有の西日に十分配慮しながら全体の配置計画と平面計画を行った.

<シンプルな外観から生み出されるリズム>

外壁にはほぼ全て,ガルバリウム鋼板製のラップ状サイディングを採用,アクセントとして”木”を採用している.

その外観は一見シンプルではあるが,ラップ状の上下垂直方向へのリズムと,通りに沿って脈打つかのように同じボリュームで構成された平面計画によって,左右水平方向へもリズムを生み出している.

ラップ状のサイディングは”ホワイト”の色を採用し,ラップ自らの”ホワイト”と,その形状が生み出す影とのコントラストが,さらにリズムを際立たせている.

夕景には,自らの明るさと,周辺からの光の反射で,ぼんやりと浮かび上がり,存在感を放っている.

<新しい生活様式への実践>

コロナ禍で懸念される「三密」を避けるために,

・施術空間を1階と2階に分ける.

・施術空間は広く確保し,席数を拡大,席同士の間隔を空ける.

・十分な換気が行えるよう天井を高く空間を確保,開口部を多数設け,自然換気に配慮.

している.

<中と外のギャップ>

“ホワイト”を基調とした外観,駐車場アスファルトの”ブラック”,エントランスドアの”グレー”,モノトーン主体の外観から一転,対照的に,内部は”木”を主体とした馴染みやすいデザインとした.

大勢の人々が集い,居心地の良い,時間の流れを忘れさせてくれるような美容室を目指し,光に溢れ,あたたかく,風通しの良いスペースをつくり出すことに心がけた.

構造体である木の柱,梁はそのままのカタチを現したものとし,空間の表情のアクセントとなっている.

床フローリング,家具,建具は木のデザインとし,空間の配色のアクセントとなっている.

また来たくなる,帰って来たくなる,通いたくなる,そんな雰囲気を出せたらと思う.

<最後に>

住宅街の一区画に,真っ白な,ある意味”とがった”アイコンとしての作品を生み出すことができた.

この建物によって,この地域に特有のリズムが生まれ,この地域特有のコミュニティを形成するきっかけになればと思う.

ココロハズムケンチク

bound-design

七川 淳